性感染症について
性病(性感染症)とは性行為により感染する疾患の総称です。以前はSTD(Sexually Transmitted Diseases)と略されていましたが、無症状の感染が多く存在することから、現在は性感染症(STI;Sexually Transmitted Infection)と呼ばれています。
淋病、クラミジア尿道炎、尖圭コンジローマ、性器ヘルペス、梅毒、HIV感染症(エイズ)ウイルス性肝炎等多くの疾患があります。症状が進行したり、感染が拡がる前に適切な処置を行えるよう、気になることがありましたら、まずはご相談ください。
なお、淋菌・クラミジア感染症の診察では、必ず排尿せずに1時間半程度以上尿を貯めた状態でお越しいただいて尿検査を出す必要があります。
淋病(淋菌感染症)とは
淋菌による感染症で、潜伏期間(感染機会から発症するまでの期間)は3~7日と比較的短く急激に発症し、男性が罹ると排尿時の強い痛みをきたし、尿道から多量の白色~黄色の膿が排出されます。クラミジア感染症と比べると症状は重いです。
また女性でも子宮頸管炎(症状がある場合は、外陰部にかゆみ、悪臭を放つ黄色いおりものが増える 等)を発症することがあります。男性と比べ症状が軽く自覚しないまま経過することが多く、感染源になり続けることもあれば、感染が上行して淋菌性骨盤内感染症(主な症状:下腹部痛、発熱、不正出血、おりもの増加 等)に進行し、不妊の原因になることもあります。
できるだけ早期の発見、治療に努めることが大切です。 その他、咽頭や直腸の感染でも症状を自覚しないことが多く、感染源になります。
検査について
診断は、検尿で顕微鏡検査、さらに尿や尿道分泌物の病原体培養、または核酸増幅法(PCR法)で判定します。淋菌とクラミジアの重複感染は20~30%程度と合併しやすいことから、淋菌とクラミジアの同時核酸検出法検査を行うことが多いです。
当院ではもっぱら尿で調べる(PCR法)ことがほとんどです。
治療について
セフリトアキソン点滴やスペクチノマイシン等の抗菌薬を投与します。
クラミジア尿道炎とは
クラミジア・トラコマチスを病原体とした尿道炎です。潜伏期間は1~3週間程度と、淋病に比べてゆっくり発症する特徴があります。排尿時痛は比較的弱く、尿道からの排膿は透明~白色で少ないので放置しやすくなります。
さらに女性は自覚症状が乏しい場合が多く、感染が長期化して上行性にひろがり、骨盤内炎症性疾患(症状は軽度なことが多い)、不妊や異所性妊娠の原因になることもあり、肝周囲炎を来すこともあります。
検査について
尿やおりもの(膣分泌液)を採取し、抗原検査法やPCR法によって確定診断します。 当院ではもっぱら尿で調べる(PCR法)ことがほとんどで、女性の子宮頸管炎も尿の検査(PCR法)で対応いたします。
治療について
治療は抗菌薬、特にマクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系が用いられます。クラミジアは男女間でお互いに感染させる「ピンポン感染」があるため、男女共同時に治療を行うことが重要とされます。
尖圭コンジローマとは
パピローマウイルスによるウイルス性のイボです。主に性行為の際に皮膚や粘膜の微小な傷から侵入、感染し、通常数週間~3ヶ月程度の潜伏期間を経て発症します。
性器全般や肛門周囲に外陰部や肛門の周囲等に乳頭状、カリフラワー状、鶏のトサカ状の腫瘤が発生し、一見で分かることが多いですが、女性の子宮頸部や膣では扁平な病変としてみられることもあります。
痛みやかゆみがあることもありますが無症状のことも多いです。
治療について
外科的処置と軟膏塗布があります。外科的処置では電気メスによる焼灼、液体窒素による凍結療法等があります。当院では主に液体窒素による凍結療法を行っています(一般的に電気メスによる焼灼よりも傷が浅く済むとされます)。
軟膏塗布は主にイミキモドクリームを用いますが、塗布した部分がただれてくることもあり、完治までに数ヶ月程度要することがあります。
なお腫瘤(いぼ)を切除しても、ウイルスを体外へ完全に排除するのは困難であることから再発することもあり、再発の早期発見に努める必要があります。
性器ヘルペスとは
主に性行為により単純ヘルペスウイルスに感染し、性器やその周囲に水疱や潰瘍等が出来る疾患です。 初めての感染(急性型)では潜伏期間は2日~3週間程度です。
症状が最も重く、発症初期には性器やその周囲にかゆみや痛みを伴う発疹を生じ、発熱や倦怠感を伴い、さらには髄膜炎を合併して排尿困難を来したり、重症化のため入院を要することもあります。
一度感染すると完治は困難で、ウイルスが生涯に渡って体内の神経節で潜伏し、性行為による刺激や心身の疲労を契機に再発を繰り返しますが、再発例(再発型)では急性型と比べ症状は軽く1週間以内に治癒することが多く、年齢と共に再発の回数も減少してくるのが一般的とされます。
検査について
性器ヘルペスは、症状が特徴的なので、問診や視診で診断がつくことが大半ですが、採血(血液検査)や水疱からの分泌物を採取し、ウイルスの有無を確認する検査を行うこともあります。
治療について
当院では主に皮膚科で対応しています。 治療の基本は薬物療法です。抗ヘルペスウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル 等)の内服が中心となります。再発の場合も同薬を用いますが、頻繁に再発しているのであれば、事前に予防対策として内服します。
膣カンジダとは
カンジダは皮膚、口、膣等にいる常在菌(真菌)です。カンジダによる皮膚感染症はガラス板で病変部を擦って顕微鏡検査を行って診断します。当院では皮膚科で対応しています。
なおカンジダ膣炎は婦人科を紹介しています。
梅毒とは
梅毒トレポネーマを病原体とする感染症です。低酸素状態でしか長く生存できないため、大部分は性行為で粘膜病変部との接触により感染します。
感染後3週間程度の潜伏期間を経て、性器や口などに痛みの無いしこり(初期硬結)や、ただれて潰瘍(硬性下疳)が出来ます。また近くのリンパ節にも痛みのない腫れがみられることもありますが、無治療でも数週間で軽快します(早期梅毒第1期)。
その後、4~10週程度の再度の潜伏期間を経て、全身の赤い発疹(バラ疹)や発熱、倦怠感が出現します。第1期と同様に無治療でも数週~数ヶ月間で症状は軽快します(早期梅毒第2期)。
さらに無治療の場合、数年~数十年の経過で、心臓や血管、脳に病変が進展します(第3期)。ただ近年は早期に発症に気づくケースがほとんどで、多くは第2期までに治療が行われています。
検査について
皮膚症状を確認した後、採血で梅毒抗体検査(RPR法、梅毒トレポナーマ抗体)を行います。
治療について
ペニシリン系の抗菌薬を用います。ペニシリンにアレルギーがあればテトラサイクリン系 等による治療となります。ガイドラインに基づいて治療しますので、服用期間については医師の指示を守るようにしてください。
HIV感染症とは
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)はHuman Immunodeficiency Virusの略称です。
HIVは、免疫システムを担うリンパ球の一種であるヘルパーT細胞やマクロファージに感染して、それらの細胞を破壊し続けることで免疫機能を低下させます。病状がだんだん進行すれば、健康な状態であればまず感染することはないとされる病原体に感染したり(日和見感染)、悪性腫瘍を発症します。これをAIDS(後天性免疫不全症候群)といいます。
感染経路の多くは性的接触(性行為)によるものですが、血液感染や母子感染のケースもあります。HIVは体外に出るとすぐに不活化してしまうため、血液や体液を介して接触が無い限り日常生活でHIVに感染する可能性は限りなくゼロに近いとされています。
感染初期(感染後2~10週間程度)は、インフルエンザに似た症状(発熱、喉の痛み、リンパ節の腫れ 等)に加え、時には発疹、口内炎等を来しますが、程度は様々で無自覚のこともあり、数日~10週間程度で多くは自然に軽快します。
この時期までで診断するのが重要とされます。その後数年~10年ほどは無症状ですが(無症候期)、その間も免疫細胞はどんどん減っていき、やがて免疫不全に陥りAIDSを発症します。
検査について
血液検査によって感染の有無は確認できます。ただ判定の手がかりとなる抗体が血液中で作られるまでに感染から8週間程度かかるとされています。
そのため同検査を希望される場合は、感染したと思われる日から3ヶ月程度の期間を空けてから受けられるようにしてください。それよりも前に受けると陽性反応が出ないこともあります。
治療について
現在のところHIV感染症を完治させることは出来ません。HIVの増殖を可能な限り抑制する薬物療法は行われます。治療は生涯に渡って続けることになります。治療は当院では行っておらず、血液内科医・感染症内科医に紹介いたします。
性感染症検査について
検査内容
当院では自覚症状が全く無い方への性感染症検査に対応しています(この場合は自費診療となります)。
尿の検査や梅毒検査で陽性となれば、そのまま当院で治療が出来ます。
- 淋菌・クラミジア(尿)
- 梅毒(血液)
- HIV(血液)
- B型・C型肝炎(血液)
- ウレアプラズマ・マイコプラズマ(尿)
等があります。
性感染症検査にかかる費用(10%税込み表示です)
診察料(初診料+再診料(2回目の結果説明受診費用)) | 4,640円 |
(血液の場合) 採血手技+判断料 | 2,000円 |
(尿検査の場合)尿の判断料 | 1,650円 |
(血液) 梅毒 | 520円 |
(血液) B型肝炎 | 2,440円 |
(血液) C型肝炎 | 1,160円 |
(血液) HIV | 1,240円 |
(尿) 淋菌・クラミジア | 2,970円 |
受診の際には診察料がまずかかります。
血液で調べる項目にはそれぞれの項目の価格の合算に、別途採血手技+判断料がかかります。
尿で調べる項目には、別途尿の判断料がかかります。
費用について(例)
(血液)梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIVに(尿)淋菌・クラミジアを行う場合
診察料+採血手技判断料+梅毒+B型肝炎+C型肝炎+HIV+尿判断料+淋菌・クラミジア=4,640円+2,000円+520円+2,440円+1,160円+1,240円+1,650円+2,970円=16,620円となります。